2017年3月2日木曜日

第32回勉強会(2017年2月25日)報告

第32回勉強会(2017年2月25日)報告
「日本の文書館の歴史に関するラフスケッチ~図書館とあわせて」
日時:2017年2月25日(土) 14:00~17:00
会場:京都商工会議所第一会議室
発表者:佐藤明俊氏
参加者数:8名

当日の出席者によるtwitter上のつぶやきをまとめたものはこちら

はじめに
・発表者の勤務先である奈良県立図書情報館は、条例により「図書館」「電子情報の作成と発信」「公文書等の保存と閲覧」の三つの機能が定められている。
・1つの建物で文書館と図書館の機能を持つ複合施設だが、事務分掌は未分離。職員構成も一体。
・図書館系の職員から、公文書館機能についてのレクチャーを求められて話したことが本日のベース。

1.用語について
・公文書館の業務に関わる用語の説明。公文書、行政文書、ライフサイクル論、古文書、諸家文書、寺社文書、史料、記録、地域資料、郷土史家、MLAなど。

2.日本の図書館・文書館発達略史
・江戸時代以前は図書と文書の境界があいまい。文庫では両方扱っていた。
・明治以降、欧米の図書館・文書館・歴史学等の概念が導入。しかし図書館に比べ、文書館の概念はなかなか根付かなかった。
・日本図書館協会の前身である日本文庫協会の設立は1892年であるのに対し、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会は1976年の設立。
・1908年、奈良県立図書情報館の前身である奈良県立戦捷記念図書館が設立。設立目的には「古文書類の保存」も挙げられている。ただし実際に当時どこまで古文書を扱っていたかは不明。
・当時の歴史学の対象は貴族大名クラスが中心。村役場文書などのような庶民の歴史に注目する人は少なかった。昭和初め頃、東京大学助教授の平泉澄は「百姓に歴史なんかない」「過去百年間は歴史学の対象ではない」と発言をしていた程。
・終戦直後、民主化やマルクス主義歴史学の影響等で庶民の歴史にスポットが当たる。一方で農地解放等の影響により諸家文書の散逸が進む。
・史料保存運動により、1951年に文部省史料館設立。のちの国立史料館、現在は国文学研究資料館アーカイブズ部門。
・1948年国立国会図書館が設立。形の上では旧帝国図書館を、小規模だった貴族院衆議院の図書室が吸収する形で作られた。各省庁に支部図書館が設置された。国会の指揮下でシンクタンク的機能を担わせようとする羽仁五郎の構想による。文書館にもつながりうる発想。

3.昭和中期の二つの「議論」
・1959年に日本で初めての公文書館として山口県文書館開館。県立図書館長だった鈴木賢祐(まさち)も関与。国立公文書館は1971年開館。
・1963年、日本図書館協会『中小都市における公共図書館の運営』(以下、「中小レポート」)発行。貸出を重視し、郷土資料の収集を必要としつつも、その定義として「現在出ている資料」を軽視し「殆ど利用されない虫食い本」を重んじる態度を好事家的として強く批判。
・同年『図書館雑誌』57-6掲載の、「中小レポート」作成メンバーの座談会記事。ここでも「虫くい本」を大事にする図書館員への強い批判がある。30年後、メンバーの一人である前川恒雄によって書かれた回顧記事(*1)でも同様の言及。
・1964年『図書館雑誌』58-7には、興風会図書館(野田市立図書館の前身)の佐藤真による批判記事。
・一方で、1964~1965年には史資料センター構想問題。日本学術会議の下のWGによる構想で、自治体古文書館の設置を促進し、地方ブロックごとに設置する国立館は主に複製を集めるとするもの。これに若手中堅歴史家や郷土史家が議論のしかたが非民主的で、実は原文書を旧帝大に集めようとする構想ではないかと反発し、構想は撤回された(*2)。
・中小レポートと史資料センター構想の2つの議論により、図書館と文書館が乖離。いずれも壮若対立の面があり、若の方が勝ってその後の主流となった。
・地域資料保存機能を市町村立図書館に担わせる路線は「中小レポート路線」に圧倒された。ただし1965年岡村一郎の論(*3)など、まったく無くなったわけではない。地域資料の保存は、図書館ではなく県史編纂事業、博物館、教育委員会等が担うことになる。

4.その後の展開
・昭和後期から1989年までの間、高度経済成長等の影響で県レベルの文書館設置が進む。
・市町村史編纂事業が進む。史料蓄積と、ハード面での整備も進むことに。
・1987年、公文書館法成立。
・平成期に入って、情報公開制度が普及。もともと公文書館は、作成後30年経てば歴史的な文書として公開しようという考え方。情報公開制度はこれより一歩踏み込み、プライバシー等の問題がなければ現用文書も公開すべきという考え方。
欧米では前者(公文書館)が普及した上で後者が導入されたが、日本は同時並行。

5.奈良県立図書情報館「公文書館機能」の現状について
・県の学事文書課が公文書館法を受けて公文書館を構想。
これに加え、かつて県立奈良図書館が諸家文書や戦前の公文書を閲覧に供していた実績があった。
この二つが背景。
・制度上は県総務課が県や出先機関の公文書を集中管理する強い権限を持つことになっているが、人員的な裏付けはない。
・館における公文書選別。保存年限経過文書リスト等から選ぶが、簿冊名が必ずしも内容を反映していないのが難しい。


6.質疑(主なもののみ、適宜まとめている)
  • 高度経済成長期やバブル期に市町村史編纂が進んだ理由。バブル期と、市政○周年が重なったことや横並び意識。ブームが終了した90年代以降については、参照すべき基本文献が見当たらないという問題がある。
  • 近世の藩文書がそのまま市町村立図書館に引き継がれたケースはあるか?→八戸の市立図書館は、八戸藩が持っていた資料を八戸書籍縦覧所として閲覧させたのが始まり。珍しい例。
  • 「中小レポート」の時代背景。その少し前に、年配の図書館員により図書館法改正運動が行われた。戦前の中央図書館制度の復活を目指したものと考えられ、それへの反発が若手から出てきたもの。ただし郷土資料自体よりも、それを重視する好事家的図書館員の方が批判の対象だった。
  • 「郷土史家」という語のイメージについて。郷土史家の主流層は教員だったが、昔の教員の資格は師範学校という中等教育機関でとるもの。学問的な訓練はあまり受けず、我流での研究をしている人もいたためか。著作や本人の経歴についても不正確な情報が残っている場合があり、確認の余地がある。

懇親会は、参加者が集まらなかったため省略となった。

・参考リンク:本テーマと関連し、以下の本について著者によるメルマガでの書評あり。
高山正也著『歴史に見る日本の図書館 : 知的精華の受容と伝承』勁草書房 2016.3

(*1) オーラルヒストリー研究会『中小都市における公共図書館の運営の成立とその時代』所収。日本図書館協会、1998
(*2) 経緯や反対論は、当該期の『地方史研究』『歴史学研究』による。
(*3) 『地方史研究』15-2

2017年1月19日木曜日

第32回勉強会のお知らせ

下記の日程で、第32回の勉強会を開催いたします。
御多忙のところと存じますが、ご参加をお待ちしております。

日時:2017年2月25日(土) 14:00~17:00
会場:京都商工会議所 第一会議室(※2階です)

発表者:佐藤明俊氏
タイトル:
「日本の文書館の歴史に関するラフスケッチ~図書館とあわせて(仮)」

会終了後は、懇親会を予定しております。

おおよその人数を把握したいので、参加ご希望の方は
会合の一週間前までを目安に、
事務局<toshokanshi.kansai @ gmail.com(@は半角)>までご一報ください。
twitterアカウント@k_context宛にご連絡いただいても構いません。

2016年7月31日日曜日

第31回勉強会(2016年7月30日)報告

「近代日本の目録史~欧米の目録規則の受容という観点から~」
日時:2016年7月30日(土) 14:00~17:00
会場:京都商工会議所第一会議室
発表者:今野創祐氏
参加者数:7名
当日の出席者によるtwitter上のつぶやきをまとめたものはこちら


今回は今野氏から近代日本の目録史について発表いただいた。
今野氏が目録史に関心を持ったのは、当会で天野敬太郎を取り上げたことがきっかけ。その後目録の歴史に関心を広げて調べていくうちに、目録の翻訳の問題点をきちんと押さえる必要があるのではないか?と思うようになったとのこと。

江戸時代にも本を分類したものはあるが、標準化をはかるような目録はなかった。明治になって洋書も流入してくるようになって書籍を適切に管理するために、目録への志向が生まれたといえる。この問題に関する先行研究として、志保田務先生の博士論文がある。日本の標準目録規則の発展史を扱っているが、欧米の目録規則の翻訳・受容の具体像はまだ検討の余地がある。

欧米では、革命後のフランスにおけるフレンチ・コード、イギリスのパニッツィの91カ条目録規則など標準化の動きが生まれてきたが、世界的な影響を与えたのは19世紀に登場したアメリカのカッターの辞書体目録である。こうした発展を受けて、20世紀になると英米で合同で目録規則を策定しようという機運が出てきた。

こうした流れを受けて日本でも東京書籍館などで目録標準化への動きが起こる。西村竹間『図書館管理法』(1892)で紹介された目録編纂法、1897年に和田万吉が翻訳した東京帝国大学付属図書館の「洋書著者書名目録編纂略則」、日本文庫協会の「和漢図書目録編纂規則」(1893、1900年の図書館管理法に掲載)、1910年の日本図書館協会の「和漢図書目録編纂概則」、1926年の鞠谷安太郎、中島猶次郎『目録編成法』(間宮商店刊行)、1932年に日図協の「和漢図書目録法」、1942年の青年図書館員聯盟『日本目録規則1942年版』などを取り上げて比較し、それぞれの特徴が紹介された。

発表のなかでは、和田万吉の図書館用語の翻訳の問題点や日図協の和漢図書目録法では書名記入か著者主記入かをめぐる主記入論争という激しい論争を呼び起こしたことも紹介された。

主な質疑は以下のとおり。

  • 目録の先行研究のほか、分類に関する先行研究にはどのようなものがあるのか。
  • 昔の図書館雑誌の論争的性格について
  • 大橋図書館で行われた図書館事項講習会では目録法は誰が担当したのか?その影響は大きいのではないか(→確認したところ、和田万吉が講師と判明)
  • 間宮商店について
  • 目録史において、ドイツの影響はあったのか。
  • 目録をとるときの情報源については、変化が見られるのか。


終了後は、懇親会が開かれた。

『図書館を育てた人々』読書会記録まとめ

事務局2号です。
テキストである『図書館を育てた人々』について、すでに取り上げた人の一覧があるとわかりやすいというご要望があったので作成しました。
リンクをクリックすると、勉強会報告のページに飛ぶようになっています。

こちらの発表希望もお待ちしています。




2016年6月30日木曜日

第31回勉強会のお知らせ

下記の日程で、第31回の勉強会を開催いたします。
御多忙のところと存じますが、ご参加をお待ちしております。

日時:2016年7月30日(土) 14:00~17:00
会場:京都商工会議所 第一会議室(※3階です)

発表者:今野創祐氏
タイトル:
「近代日本の目録史~欧米の目録規則の受容という観点から~」

会終了後は、懇親会を予定しております。

おおよその人数を把握したいので、参加ご希望の方は
会合の一週間前までを目安に、
事務局<toshokanshi.kansai @ gmail.com(@は半角)>までご一報ください。
twitterアカウント@k_context宛にご連絡いただいても構いません。

2016年6月4日土曜日

第30回勉強会のお知らせ(協力:京都府立図書館)【追記あり】

下記の日程で、第30回の勉強会を開催いたします。
ご多忙のところと存じますが、ご参加をお待ちしております。

日時:2016年6月26日(日) 14:00~16:30
会場:京都府立図書館 3階 マルチメディアインテグレーション室
発表者:田中あずさ氏、江上敏哲氏
タイトル:「北米の外邦図、その発見と整理」

※今回は、京都府立図書館のご協力により会場をお借りしています。
 当日、発表とは別に、同館所蔵の洋書コレクションについての簡単な紹介も行われる予定です。

※16:00から約30分間、京都府立図書館のバックヤードツアーが行われます。(2016/6/9追記)


おおよその人数を把握したいので、参加ご希望の方は
会合の一週間前までを目安に、
事務局<toshokanshi.kansai @ gmail.com(@は半角)>までご一報ください。
twitterアカウント@k_context宛にご連絡いただいても構いません。

※外邦図についての参考リンク:https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-601012.php

2016年5月25日水曜日

関西文脈の会について(2016年5月時点)

関西文脈の会の趣旨と沿革について、簡単にご紹介します。

関西文脈の会
関西文脈の会は、図書館職員、研究者、学生、その他有志による図書館史の勉強会です。2010年3月から活動しています。
もともとは東京で2009年7月から活動していた「文脈の会」の、関西支部として発足したものです。
その後、初期事務局メンバーの東京への異動などもあり、現在は関西圏を拠点とした他の勉強会とも交流を深めながら、図書館の歴史に関する文献の読書会として、また、個々人の調査研究成果を持ち寄って報告し、ディスカッションする自由な場として活動を続けています。
詳細については、「関西文脈の会について(2011年6月時点)」を合わせてご参照ください。



勉強会のルール
以下のルールによって運営しています。
  • 開催はおおむね2か月に一度。土日のいずれかの14:00~17:00とする。
  • 参加者持ち回り制(継続参加者は、原則として最低一人一回は分担するものとする)
  • 発表形式は自由(パワーポイントでもレジュメ形式でも可とする)
  • 制限時間はとくに設けない(質疑応答の時間を含めて時間内に終わればOK)。
  • 発表内容は自由論題またはテキスト輪読から選択。
※自由論題の場合は、図書館ないし本の歴史に関し、発表者が興味を持った事柄について自由にテーマを設定して発表する。「図書・図書館史」に部分的に関係するものであれば時代・地域等は問わないものとする。また、対象も図書館そのものに限定せず、本の歴史、読書の歴史、各機関所蔵の特殊コレクションの沿革といったテーマを扱ってよいものとする。
※テキスト輪読の場合は、石井敦編『図書館を育てた人々 日本編1』を輪読し取り上げられている図書館人の活動について紹介する。
  • 会場費とレジュメ印刷費用については当日参加者で等分する。
  • 発表の成果について、発表者が希望する場合には、他の研究会・勉強会での再演を妨げない。また発表の内容について、既存のジャーナルへの投稿も妨げない。

2016年2月までに、通算29回の勉強会を開催しています(共催イベント等は除く)。
今後の勉強会にご関心のある方は、toshokanshi.kansai●gmail.com(●を@に置き換えてください)までご一報ください。